物損事故における損害賠償請求

物損事故において精神的損害(慰謝料請求)は認められるか?

物損事故に遭った場合,被害者の方は加害者等に対して損害賠償を請求できます。ここでは,物損事故において精神的損害の賠償請求(慰謝料請求)が認められるのかについてご説明いたします。

物損事故における慰謝料請求

交通事故のうち人身事故の場合,被害者の方(またはご遺族等)は,交通事故によって被った精神的損害の賠償を請求することができます。いわゆる「慰謝料請求」です。

それでは,物損事故の場合にも,この精神的損害の賠償請求(慰謝料請求)が認められるのかということが問題となってきます。

結論から言ってしまうと,物損事故の場合には,人身事故の場合とは逆に,慰謝料請求は認められないのが原則です。

物損事故の場合には,慰謝料請求が認められるのは,ごく例外的な場合に限られるのが現在の実務です。

→ 詳しくは,物損事故における損害全般

物損事故において慰謝料請求が認められた裁判例等

物損事故においては,前記のとおり,慰謝料請求は認められないのが通常ですが,まったく慰謝料請求が認められた例がないというわけではありません。

以下は,物損事故において慰謝料請求が認められた裁判例のうち代表的なものを挙げています。

名古屋高判平成20年9月30日

上記裁判例は,交通事故によって被害者らのペット(なお,賛否両論あるでしょうが,現行法上は,ペットについては「物」として扱われるのが通常です。したがって,ペットが傷害等を負わされたとしても,物損として扱われることになります。)が後肢麻痺等の障害を負ったという事案で,飼い主である被害者ら2名に対して合計40万円の慰謝料を認めたというものです。

東京高判平成16年2月26日

上記裁判例は,交通事故によって被害者のペットが死亡したという事案で,飼い主である被害者に対して慰謝料として5万円を認めたというものです。

大阪地判平成15年7月30日

上記裁判例は,加害自動車が,被害者の自宅に突っ込み,被害者宅の玄関が損壊したという事案において,被害者宅の玄関が1月以上にわたってベニヤ板を打ち付けた状態で過ごさざるを得なくなったというということから,慰謝料として20万円を認めたというものです。

神戸地判平成13年6月22日

上記裁判例は,加害自動車が,被害者の自宅に突っ込んでその家屋を損壊したため,高齢の被害者2名がその家屋を離れてアパート暮らしを余儀なくされたという事案において,借金をしなければならなくなったなどの事情も考慮しつつ,慰謝料として2名分で60万円を認めたというものです。

大阪地判平成12年10月12日

上記裁判例は,加害自動車が霊園にある墓石に衝突して,その墓石が倒壊するとともに骨壺が露出するほどになったという事案において,慰謝料として10万円を認めたというものです。

物損事故の慰謝料が認められる場合

前記裁判例からも分かるとおり,単純に車両が損壊されたという程度では慰謝料は認められません。つまり,裁判所は,その被害車両に対する愛着などというものだけでは,精神的損害があるとはいえないと考えているということです。

例外的に物損事故において慰謝料請求が認められる場合とは,単に財産が損壊されたというだけではなく,社会通念上も,それを損壊されたならば著しい精神的苦痛を受けるであろう特殊な財産(自宅,ペット,墓地など)が損壊されたという場合だけであるといえるでしょう。

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