交通事故における各種の保険制度

自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)における被保険者とは?

自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は,その被保険者に生じた損害を賠償するものです。ここでは,この自賠責保険における被保険者についてご説明いたします。

自賠責保険の仕組み

自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は,簡単に言うと,運行供用者など損害賠償責任を負うべき加害者等に資力がないことによって,交通事故の被害者に対する損害の填補がなされないという事態を回避するため,自賠責保険会社がその損害賠償の一部又は全部を代わりに支払うという制度です。

もっとも,交通事故を起こして損害賠償の責任を負う者すべてについて,損害の填補をするというものではありません。

自賠責保険によって損害が填補されるのは,自賠責保険に入っている自動車の「保有者」又は「運転者」による自動車事故に基づく損害賠償責任を負う場合だけです。

したがって,自賠責保険によって損害填補を受けることができる被保険者とは,損害賠償責任を負うことになる自動車の保有者と運転者であるということになります。

それ以外の場合で損害賠償責任を負う者,保有者や運転者以外の運行供用者や不法行為者等は,自賠責保険による損害の填補を受けることはできません。自賠責保険はあらゆる損害賠償の填補をしてくれる制度ではないということです。

→ 詳しくは,自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)とは?

自動車の保有者

【自動車損害賠償保障法 第2条第3項】
この法律で「保有者」とは,自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で,自己のために自動車を運行の用に供するものをいう。

自賠責保険による損害の填補を受けることができる「保有者」とは,上記のとおり,「自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で,自己のために自動車を運行の用に供するもの」のことをいいます。

「自己のために自動車を運行の用に供するもの」という点については,運行供用者と同じですが,保有者は,さらに「自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者」でなければなりません。

したがって,運行供用者責任を負うもののうちでも,「自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者」だけが,自賠責保険によって損害の填補を受けることができる被保険者となるということです。

自動車の運転者

【自動車損害賠償保障法 第2条第4項】
この法律で「運転者」とは,他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事する者をいう。

自賠責保険による損害の填補を受けることができる「運転者」とは,上記のとおり,「他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事する者」のことをいいます。

自分のためではなく,他人のために自動車を運転したり運転補助をしたりする者という意味です。したがって,仮に交通事故を起こした場合でも,この運転者は運行供用者責任を負うことはありません。

もっとも,民法第709条の不法行為責任を負うことはありますから,やはり損害填補の必要があります。そのため,自賠責保険の被保険者とされています。

加害者請求と被害者請求

前記のとおり,加害自動車の保有者と運転者は,自賠責保険における被保険者となります。

したがって,加害自動車の保有者または運転者が,運行供用者責任や民法709条などに基づき損害賠償を支払った場合には,これらの被保険者は,自賠責会社に対して保険金の支払いを請求することができます(自動車損害賠償保障法15条)。これを「加害者請求(15条請求)」と呼んでいます。

もっとも,自賠責保険の趣旨は,被害者保護にあります。そこで,自動車の保有者や運転者が支払いをする前であっても,被害者は,自賠責会社に対して,被保険者に代わって損害賠償を支払うことを求めることができます(自賠法16条)。これを「被害者請求(16条請求)」と呼んでいます。

ただし,上記の被害者請求は,あくまで被保険者が運行供用者責任に基づく損害賠償責任を負うことを前提に認められるものです。したがって,被保険者に運行供用者責任に基づく損害賠償責任が生じない場合には,被害者請求をすることはできません。

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