交通事故における各種の保険制度

自賠責保険の保険金・損害賠償金の金額はどのように決められるのか?

自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)において支払われる保険金または損害賠償金の金額は,法令に基づき決定されることになります。ここでは,この自賠責保険における保険金または損害賠償金の金額がどのように決められるのかについてご説明いたします。

自賠責保険における保険金・損害賠償金

自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は,自動車の保有者や運転者が自動車事故による損害賠償責任を負担する場合に,その損害賠償を填補するための保険です。

その趣旨は,自動車保有者等の保護というよりも,自動車事故の被害者が最低限度の損害の填補を受けられるようにするという被害者保護にあります。

自賠責保険の被保険者は,上記の自動車の保有者と運転者です。これらの被保険者は,実際に被害者に対して損害賠償金を支払った場合には,自賠責保険会社に対して保険金の支払いを請求することができます。これを「加害者請求」といいます。

他方,自賠責保険とはそもそも上記のとおり被害者保護のための制度ですから,被害者も,被保険者から損害賠償の支払を受ける前に,自賠責保険会社に対して損害賠償金の支払いを求めることができます。これを「被害者請求」といいます。

もっとも,自賠責保険は,被害者保護のための最低限度の損害の填補を保障するための保険です。つまり,損害のすべてを填補できるというわけではないのです。

自賠責保険においては,支払われる保険金や損害賠償金の金額について法律によって一定限度の制限があります。

→ 詳しくは,自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)とは?

自賠責保険の保険金・損害賠償金の上限

自賠責保険の保険金額の上限は,自動車損害賠償保障法13条に基づく自動車損害賠償保障法施行令2条によって,以下のように定められています。

死亡事故の場合

  • 死亡による損害       3000万円
  • 死亡までの傷害による損害   120万円

傷害事故の場合

  • 傷害による損害        120万円
  • 後遺障害による損害
    • 介護を要する後遺障害の場合  3000万~4000万円
    • その他の後遺障害の場合   75万~3000万円

実際の保険金・損害賠償金の支払基準

前記のとおり,自賠責保険における保険金・損害賠償金の金額は,法令によって上限が定められています。したがって,実際の保険金・損害賠償金は,この上限の範囲内で支払われるということになります。

それでは,どのように実際の支払金額が決められるのかというと,これについては「支払基準」と呼ばれるものがあります。正式には,「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(平成13年12月21日金融庁国土交通省告示第1号)と呼ばれるものです。

この支払基準は,かつては通達にすぎませんでしたが,現在では,自賠法16条の3によって法律上の根拠が与えられています。

支払金額の決定の手続

前記のとおり,自賠責保険の保険金・損害賠償金の支払金額は.自賠責保険会社が前記支払基準に従って決定することになりますが,その前提として,損害がどれくらいかを査定する必要があります。

自賠責保険の場合,損害額の査定は自賠責保険会社ではなく,自賠責保険会社から委嘱を受けた「損害保険料率算出機構」という機関の下部組織である「自賠責損害調査事務所」が行います。

この自賠責保険損害調査事務所が支払基準に従って査定をし,その結果をもとに,自賠責保険会社が保険金・損害賠償金の支払金額を決定することになります。

自賠責保険損害調査事務所の査定は,あくまで支払基準に従って,ある意味機械的になされるものです。したがって,調査事務所においても,支払基準に反する査定はできないのです。

もっとも,査定そのもののやり方などに不服がある場合には,損害保険料率算出機構に対する異議申立てや交通事故紛争処理センター自賠責保険・共済紛争処理機構等のADR(裁判外紛争処理機関)に対する紛争処理の申立てをすることが可能です。

場合によっては,自賠責保険会社(または一括請求の場合の任意保険会社)を相手に訴訟を提起するということもあり得るでしょう。

自賠責保険の支払金額を超える損害がある場合

前記のとおり,自賠責保険は,被害者の最低限度の損害填補を保障しようとするものですから,損害のすべてを完全に填補するだけの保険金や損害賠償金が支払われるというわけではありません。

そうなると,自賠責保険の保険金・損害賠償金だけでは,損害を賄いきれないということが生じます。死亡事故や後遺障害が残るような事故の場合には,上記の保険金額では全く足りないということも十分にありえます。

したがって,自賠責保険によってもまかないきれない損害については,別途,自賠責保険とは別に加害者等に請求する必要があります。

そして,この自賠責保険を超える損害の填補を図ろうという制度が,各保険会社が提供している、いわゆる「任意保険」なのです。

そのため,自賠責保険は「下積み保険」,任意保険は「上積み保険」と呼ばれることがあります。

→ 詳しくは,自賠責保険と任意保険の関係

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