交通事故における各種の保険制度

自賠責保険の仮渡金とは?

自賠責保険には,被害者保護のために仮渡金という制度が用意されています。ここでは,この仮渡金とは何かについてご説明いたします。

仮渡金とは

自動車による交通事故に遭った場合,被害者の方は,加害者等に対して損害賠償を請求できます。

もっとも,加害自動車の保有者が自賠責保険に加入していた場合で,その自動車保有者について運行供用者責任が成立する場合には,その運行供用者たる自動車保有者に対してではなく,自賠責保険会社に対して,直接に損害賠償金の支払いを求めることができます。これを「被害者請求」といいます(自動車損害賠償保障法16条)。

しかし,被害者請求ができるといっても,被害者請求をすれば,すぐに損害賠償金の支払いがなされるわけではありません。

支払いがなされるのは,原則として,示談・和解が成立した場合または裁判が確定し,支払われるべき損害賠償金額が確定した段階ということになります。

支払基準に従った支払いを求める場合であれば,自賠責保険損害調査事務所の調査が終わってからということになりますから,それなりの時間はかかります。裁判・訴訟で支払いを求めるということになれば,もっと時間がかかるでしょう。

しかし,交通事故でけがをしたら,治療費などはすぐに支払わなければなりませんし,死亡事故の場合であれば,遺族の方は葬儀費用の支払いなども必要となります。つまり,被害者等は,交通事故によって当座の資金が必要となるわけです。

したがって,被害者としては,当面の生活費や医療費が必要であるという場合が少なくありません。したがって,損害賠償金額が確定するまで待っていられないということがあるでしょう。

そこで,被害者保護の見地から,設けられた制度が,自賠責保険における「仮渡金」の制度です。

すなわち,仮渡金制度とは,損害賠償の額が確定する前であっても,将来損害賠償として支払われるであろう当座の資金の支払いを自賠責保険会社に対して被害者請求することができるという制度のことをいいます。

→ 詳しくは,自賠責保険の被害者請求

仮渡金の支払基準・金額

仮渡金の支払金額の上限は,自動車損害賠償保障法17条1項及びそれに基づく自動車損害賠償保障法施行令5条によって定められています。具体的には,以下のとおりです。

  • 死亡者1人につき 290万円
  • 以下の傷害を受けた者1人につき 40万円
    • 脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有する場合
    • 上腕又は前腕骨折で合併症を有する場合
    • 大腿又は下腿の骨折
    • 内臓破裂で腹膜炎を起こした場合
    • 14日以上入院を要する傷害で30日以上の医師の治療が必要な場合
  • 以下の傷害を受けた者1人につき 20万円
    • 脊柱の骨折
    • 上腕又は前腕の骨折
    • 内臓破裂
    • 入院を要する傷害で30日以上の医師の治療を必要とする場合
    • 14日以上の入院を必要とする場合
  • 11日以上の医師の治療を要する傷害を受けた者1人につき 5万円

内払金

かつては,この仮払金に類似する制度として「内払金」というものがありました。

内払金は,仮払金と異なり法的な根拠があるものではなかったのですが,交通事故損害賠償の実務では,事実上認められていた制度で,当座の資金が必要となった場合に,概ね10万円単位ごとに。損害賠償金額確定前に金銭の支払いを求めることができるという制度でした。

この内払金の制度は,現在ではすでに廃止されていますが,任意保険においては仮払いが認められているので,相手方が任意保険に加入している場合には,それほど不都合はないでしょう。

相手方が任意保険に加入していない場合には,内払の制度がなくなっていますので,前記の仮渡金制度を利用するか,または資金が必要となる都度,本請求をする必要があります。

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