交通事故における過失相殺

過失相殺は必ず行われるのか?(過失相殺の義務性)

交通事故の損害賠償請求においては,過失相殺が問題となることが少なくありませんが,この過失相殺は必ず行われるというわけではありません。ここでは,過失相殺は必ず行われるのか(過失相殺の義務性)について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

(著者:弁護士 志賀 貴

過失相殺とは?

交通事故による損害賠償請求の根拠は,民法709条に定める不法行為責任です。この不法行為責任の趣旨は,損害の公平な分担をするという点にあります。

交通事故などの不法行為事案においては,もちろん当事者の一方が,一方的に被害を受けているという場合もありますが,被害者に落ち度があるということも少なくありません。

そこで,そのような被害者・加害者両当事者の落ち度を斟酌して,どちらがどれだけ損害を分担すべきかということを調整するということが不法行為制度の趣旨であるということです。

この不法行為制度を最も端的に表している法制度が「過失相殺」という制度です。すなわち,過失相殺とは,両当事者それぞれの過失を斟酌して,その過失の割合に応じて,損害賠償額を調整していくという制度です。

>> 過失相殺とは?

債務不履行責任の場合の過失相殺の義務性

過失相殺については,民法418条に規定があります。

【民法 第418条】
債務の不履行に関して債権者に過失があったときは,裁判所は,これを考慮して,損害賠償の責任及びその額を定める。

上記のとおり,過失相殺の規定は,債務不履行に基づく損害賠償請求の法制度としても規定されています。この規定によれば,過失がある場合,「裁判所は,これを考慮して,損害賠償の責任及びその額を定める」ことになっています。

どういうことかというと,債務不履行における損害賠償請求においては,「定める」と断定的に規定されています。つまり,当事者に過失がある場合には,裁判所は過失相殺をしなければならないという意味です。

要するに,債務不履行における損害賠償請求においては,過失相殺について,裁判所にそれをしなければならないという義務が課せられているということです。義務性があるのです。

>> 債務不履行責任とは?

不法行為責任の場合の過失相殺の義務性

前記のとおり,過失相殺については,債務不履行責任の規定として定められており,しかも,その過失相殺には義務性があるとされています。

これに対して,民法722条2項は,不法行為責任に基づく損害賠償請求における過失相殺について以下のように規定します。

【民法 第722条第2項】
被害者に過失があったときは,裁判所は,これを考慮して,損害賠償の額を定めることができる。

上記不法行為における過失相殺規定は,前記債務不履行における過失相殺規定と異なり,過失相殺をすることが「できる」というように定められています。

これは,どういうことかというと,不法行為の場合,裁判所は,被害者に過失があった場合であっても,過失相殺をすることもできるがしなくてもよい,つまり,必ず過失相殺しなければならないのではなく,過失相殺をするかどうかを裁判所が決めることができるということです。

したがって,不法行為の場合には,過失相殺は義務的ではないということです。

交通事故損害賠償請求の場合は,不法行為に基づく損害賠償請求ですから,上記のとおり,過失相殺は義務的ではありません。

しかし,交通事故事件の裁判実務ではどうなっているのかというと,被害者に過失があれば,ほとんど必ずといっていいほど,過失相殺されるのが通常でしょう(ただし,当事者による過失と評価される具体的事実の主張・立証は必要です。)。

>> 不法行為責任とは?

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