後遺障害事故における逸失利益算定のための中間利息控除
後遺障害逸失利益を算定するためには,中間利息控除という処理が必要となってきます。ここでは,この後遺障害事故における逸失利益の算定における中間利息控除の問題について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
後遺障害逸失利益における中間利息控除とは?
交通事故によって傷害を負い,それによって後遺障害(後遺症)が残ってしまった場合,被害者の方は加害者に対して,後遺障害逸失利益を損害として賠償することができることがあります。
この後遺障害逸失利益を計算式は,以下のとおりです。
- 後遺障害逸失利益 = 1年あたりの基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数(またはホフマン係数)
この後遺障害逸失利益というものは,1年当たりの基礎収入を基準として計算されるものです。したがって,本来であれば,1年ごとに年金として逸失利益を支払うことになるはずです。
もっとも,我が国の法制度では,損害賠償は一時金(一括払い)が原則となっています。そうすると,一時金で支払われると被害者の方が手にする金額は大きなものとなりますから,それを運用などすれば,1年ごとに逸失利益の支払いを受ける以上に大きな利益を得ることが可能となり得ます。
しかし,それでは,損害賠償制度の趣旨である当事者間の公平に反するということになりかねません。そこで,一時金として支払われる後遺障害逸失利益を,年払いで支払われた場合と同程度の利益になるように評価し直す必要が出てきます。
その評価のし直しの方法を「中間利息控除」と呼んでいます。要するに,一時金として支払われる損害賠償金から,運用などによって得られる過剰な利益をあらかじめ差し引いておくという処理のことです。
中間利息控除の方法
後遺障害逸失利益の中間利息控除は,前記計算式にあるように,労働能力喪失期間に対応して定められている一定の係数を乗ずるという方法によって行われます。
この係数には,ライプニッツ係数とホフマン係数というものがあります。ライプニッツ計算式によるものをライプニッツ係数といい,ホフマン計算式によるものをホフマン係数といいます。
ライプニッツ係数は利息の計算方法を複利計算するもので,他方,ホフマン係数は利息の計算方法を単利計算するものです。複利計算の方が控除される利息金額は大きくなりますから,損害賠償金としてみれば,ライプニッツ係数よりもホフマン係数の方が大きくなります。
もっとも,現在では,ライプニッツ係数によって計算するのが通常です。なお,ライプニッツ係数表は,以下のページをご覧ください。
中間利息控除の開始時期
前記のとおり,後遺障害逸失利益の算定においては,ライプニッツ係数による中間利息控除の処理が必要となります。ここで問題となるのは,中間利息控除の開始時期をどの時点と考えればよいのかということです。
この点については,交通事故時を開始時期とする見解(事故時基準説)と後遺障害の症状固定時とする見解(症状固定時基準説)があります。
いずれの説が妥当かということについては,裁判例においても分かれており,確立した見解はまだないというのが現状でしょう。
しかし,事故時基準時説によると,過去の積極損害や休業損害も事故時を基準とすべきということになり,損害額の算定が困難となってしまうおそれがあります。したがって,やはり症状固定時基準説が妥当というべきでしょう。