人身・後遺障害事故における損害賠償請求

人身・後遺障害事故における症状固定とは?

後遺障害事故においては「症状固定」をどの時点とするかということが重要となることがあります。ここでは,この症状固定とは何かについてご説明いたします。

後遺障害(後遺症)

交通事故における「後遺障害」とは,自動車損害賠償保障法施行令によれば「傷害が治つたとき身体に存する障害をいう」とされています(同施行令2条1項2号柱書)。一般的にいう「後遺症」と考えて差し支えないでしょう。

つまり,交通事故によって受傷した場合に,その傷害自体は治癒されてもなお身体に障害がのこってしまっている状態のことです。

この後遺障害には非常にさまざまなものがありますが,それらに共通していえることは,治癒が不可能又は困難であるという点です。

無論,後遺障害が治癒されるという例もありますが,基本的には,完全に元通りの状態に戻るということが難しく,被害者の方は,非常な長期間,場合によっては生涯その後遺障害を負っていかなければならないという非常に大きな負担を課されることになります。

それだけに,後遺障害事故においては,「損害」も,後遺障害のない通常の傷害事故に比べて大きなものとなります。

→ 詳しくは,後遺障害事故の損害賠償請求

症状固定とは

後遺障害事故における損害賠償請求の特徴として,「症状固定」という概念があります。

前記のとおり,後遺障害とは治癒が困難であるという性質がありますが,しかし,治癒が困難な障害があるといえるかどうかは,まず診断をしてみなければ分かりません。

つまり,後遺障害があるかどうは,交通事故の時点では分からないのです。通常の傷害事故と同様,まずは医師による診察・治療を受け,その結果,治癒ができない障害があるということが判明することになります。

そして,これ以上治療を施しても治癒が困難な障害(後遺障害)があると判断されることを「症状固定」と呼んでいます。文字どおり,治癒が困難であるという症状・状態が,その後も固定されるという意味です。

被害者の方にとっては,これ以上治療しても良くならないという宣告に等しいので辛いことではありますが,損害賠償請求においては,この症状固定の時点(症状固定時)をいつとするのかということは,非常に重要な意味を持ってきます。

この点,症状固定について「負傷に対して行われる医学上一般に承認された治療方法をもってしても,その効果が期待し得ない状態で,かつ,残存する症状が,自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達すること」と定義付けている裁判例もあります(さいたま地判平成14年1月24日)。

症状固定の意味

後遺障害事故の損害賠償請求においては,この症状固定の時期をどの時点とするかは重要な意味を持ってきます。

後遺障害事故においては,事故による後遺障害が原因で,事故以前のように働けなくなり収入を失う又は減少されるということがありますが,この事故によって得られるはずだった利益を得られなくなった場合にその失った利益は,消極損害として賠償を請求することが可能です。

この消極損害には,休業損害逸失利益と呼ばれるものがあります。これらは,ともに消極損害ですが,その計算方法に違いがあります。

後遺障害事故の場合,この休業損害と逸失利益は,症状固定時を基準として区別されるのが通常です。すなわち,症状固定前に失った利益を休業損害として扱い,症状固定後に失うことになるであろう利益を逸失利益をとして扱うということです。

また,交通事故の損害賠償請求には,上記消極損害のほかに,交通事故によって余儀なくされた支出を損害とする積極損害というものもあります。

こちらもやはり症状固定時を基準として,症状固定前を過去の積極損害,症状固定後を将来の積極損害として扱うのが一般的です。

すなわち,症状固定は,損害の項目・内容・計算方法・金額を判断するための基準とされているのです。

→ 詳しくは,後遺障害事故の損害

症状固定の時期

前記のとおり,症状固定の時期をどの時点とするのかということは,損害賠償の金額に関わってくる場合があるため,重要な意味を持っています。

そこで,症状固定時をどの時点とすればよいのか,早い段階で症状固定とした方がいいのか,遅い段階で症状固定とした方がいいのか,ということが問題となってきます。

積極損害に関していえば,症状固定後の支出は,症状固定前の支出よりも必要性が小さいものとして認められない可能性があります。また,現実的な問題として,症状固定後は保険会社からの診療費等の支払いが打ち切られるため,経済的に厳しい状況になる可能性があるという点も考慮する必要があるでしょう。

したがって,積極損害という面からすると,症状固定時は遅い方がよい場合が多いかもしれません。

しかし,消極損害に関しては,早い方がよいか遅い方がよいかは,個別の状況によって異なるため一概にどちらがよいとはいえません。

休業損害と逸失利益とは計算方法が異なるため,個別の状況によっては,休業損害として請求した方がよいこともありますし,逸失利益として請求した方がよいこともあるからです。

後遺障害事故において損害賠償金の大半は消極損害部分ですから,積極損害が大きくなるからといって症状固定時を遅くすると,消極損害が減少してしまい,損害賠償金額が大幅に減少してしまうということもあります。

したがって,一概に早くすべきか遅くすべきかとはいえないのです。個別に判断する必要があるでしょう。

任意保険会社による打ち切りと症状固定

交通事故から一定の期間が経過すると,保険会社からの支払いが打ち切られる場合があります。

しかし,これは保険会社側の都合又は戦略に過ぎず,この時点をもって症状固定時とされるわけではありません。

どの時点が症状固定時となるのかはあくまで法的な判断です。したがって,保険会社が打ち切りをしたからといって,それが症状固定となるわけでないのです。

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