人身・後遺障害事故における損害賠償請求

後遺障害等級とは?

後遺障害事故における損害賠償請求においては,後遺障害等級が重要となってきます。ここでは,この後遺障害等級についてご説明いたします。

後遺障害の等級

交通事故の後遺障害(後遺症)とは,自動車損害賠償保障法施行令によれば「傷害が治つたとき身体に存する障害をいう」とされています(同施行令2条1項2号柱書)。

つまり,後遺障害があるということの意味は,傷などは治ったとしても,治癒することが不可能又は困難な身体的な身体的障害がのこっているということです。

もっとも,後遺障害とひとくちにいってもその程度はさまざまです。植物状態という場合もあれば,比較的軽微で日常生活にはほとんど差支えがないというような場合もあります。

そのため,一律に損害賠償の基準を定めることはできません。

そこで,自賠責保険の適用がある後遺障害事故の場合,その後遺障害の症状・程度ごとに一定の基準が設けられています。この基準を「後遺障害等級」といいます。

後遺障害等級の意義

自賠責保険の損害賠償金等の請求については,その後遺障害がどの等級に当たるのかということを認定する必要があることになります。

この後遺障害等級が認定は,損害賠償請求において具体的にどういう意味を持ってくるのかというと,まず,自賠責保険の損害賠償金額の上限を画するという意味をもってきます。

また,個別の事故における逸失利益の算定と慰謝料の算定においても意味を持ってきます。

後遺障害事故の場合,自賠責保険の損害賠償金額(保険金額)は,後遺障害等級ごとに上限が決められています。そのため,後遺障害等級は,自賠責保険の損害賠償金額の上限を画するという意義を持っているといえます。

また,後遺障害事故の場合,個別の逸失利益は,「1年当たりの基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」によって算定しますが,この労働能力喪失率も,後遺障害等級ごとにその割合が定められています。

慰謝料の金額も,同様に,後遺障害等級ごとに金額が決められています。

→ 詳しくは,後遺障害等級の一覧表

後遺障害等級の認定

後遺障害等級は,自動車損害賠償保障法施行令の別表(第一および第二)において定められています。

この別表に基づき,個別の事故について,どの等級に当てはまるのかを,損害保険料率算出機構が認定することになります。

この機構による認定に不服がある場合には,異議申立てをすることができます。

訴訟の場合における等級の意義

前記のとおり,後遺障害等級は,自賠責保険における基準ですが,等級認定がなされた場合,任意保険においてもその認定が尊重され,その認定された等級に基づく損害賠償金等が支払われることになります。

それでは,訴訟の場合には,この認定された等級がどのような意味を持ってくるのでしょうか?これは,裁判所が,自賠責において認定された等級に拘束されるのかという問題でもあります。

結論をいえば,裁判所は,損害保険料率算出機構が認定した後遺障害等級や「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(以下「支払基準」といいます。)に拘束されることはありません。

つまり,裁判所は,独自に,個別の事情に応じて,労働能力喪失率や慰謝料の金額等を判断することができます。

したがって,仮に,自賠責保険では等級10級しか認められなかったとしても,判決においては,等級9級レベルの労働能力喪失率や慰謝料金額が認定されることもあるということです。

もちろん,逆に,たとえば自賠責では等級10級が認定されたにもかかわらず,訴訟においては11級レベルしか認められないという場合も理論上はあり得るでしょう。

しかし,実際には,裁判所は,損害保険料率算出機構による認定をかなり重視しています。そのため,同機構による認定よりも上のレベルの認定がなされることは少ない反面,それ以下になるということも少ないでしょう。

労災保険との関係

自賠責保険における後遺障害等級は,労働者災害補償保険法施行規則において定められている後遺障害等級と同じものです。

また,損害保険料率算出機構による等級認定も,基本的に,労災保険における認定に準じて行われることになっています。この労災認定については,財団法人労災サポートセンター編「労災補償障害認定必携」という書籍の基準が,実務上の基準として参考にされています。

ただし,自賠責保険の場合は損害保険料率算出機構が認定をし,労災の場合は労働基準監督署長が認定をすることになりますから,基準は同じでも,認定機関が異なる以上,実際の認定の内容等に違いが出るという場合はあり得ます。

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