交通事故の損害賠償請求の相手方

加害者の親や家族等に対して損害賠償を請求できるか?

交通事故に遭った場合に,その加害者の親や家族などに損害賠償を請求できるでしょうか。ここでは,加害者の親や家族等に対して損害賠償請求できるかについてご説明いたします。

家族・兄弟等の責任

交通事故に遭った場合,被害者の方は,その交通事故の加害者に対して,民事責任の追求として損害賠償を請求できます。

この場合,加害者が自賠責保険任意保険に加入していれば,被害者の方は十分な損害賠償金を得ることが可能です。

しかし,加害者が何の保険にも加入しておらず,しかも無資力であったという場合,最悪の場合には,まったく損害の填補を受けることができないということもあり得ます。

そのような場合に,被害者側としては,加害者の家族・兄弟・親戚などに責任をとって欲しいと考えることもあるでしょう。実際,LSC綜合法律事務所でも,そのようなご相談を受けることがあります。

しかし,残念ながら,それは原則としてできません。損害賠償責任を負うのはあくまで加害者など法的に責任を負うべき立場の者だけであり,家族や兄弟であるというだけで責任を負担しなければならないという法的根拠はないからです。

→ 誰に対して損害賠償請求できるか?

家族等が責任を負担する場合

前記のとおり,加害者の家族・兄弟・親族というだけで,交通事故の損害賠償責任を負担するということはあり得ません。

しかし,家族等であっても,法的責任を負う場合がまったくないわけではありません。

その家族・兄弟等が運行供用者であるならば,運行供用者責任に基づき損害賠償責任を負担することになりますし,加害者の使用者であるならば,使用者責任に基づき損害賠償責任を負担することになります。

さらに,加害者が責任無能力者であり,その家族・兄弟・親族がその責任無能力者の監督義務者である場合には,監督義務者としての損害賠償責任を負う場合があります。

運行供用者責任

運行供用者とは「自己のために自動車を運行の用に供する者」(自賠法3条)のことをいいます。この運行供用者は,自賠法3条に基づき損害賠償責任を負担することになります。

したがって,家族・親・兄弟などがこの運行供用者に当たる場合には,被害者の方は,運行供用者責任に基づいて損害賠償を請求できるということになります。

たとえば,加害自動車の所有者が親であるという場合,その加害者の親は運行供用者に当たりますので,その親に対しても損害賠償を請求できるということです。

また,所有者ではない場合でも,その家族等が自動車の運行を支配しており,その運行によって利益を得ている場合には,運行供用者に当たるといえるので,損害賠償責任を負担することになります。

ただし,親子ですので,子の運転について親に運行利益が生ずると考えるのはなかなか難しいように思えます。したがって,中心となるのは運行支配性でしょう。

裁判例でも,運行支配または管理があったかどうかを判断の中心に据えており,特にその未成年者と同居あるいは車両を親元で保管していたかどうかなどの事実関係が重視されています。

→ 運行供用者責任とは?

使用者責任

家族・親・兄弟等が,交通事故加害者の使用者・雇い主であり,その交通事故がその事業の執行について生じたものであれば,その家族・親・兄弟等は使用者責任を負うことになります(民法715条)。

たとえば,親・兄弟が使用者として加害者を雇用していた場合に,その事業の執行に関して交通事故が生じたのであれば,被害者の方は,その親や兄弟に対しても使用者責任に基づいて損害賠償を請求できるということになります。

→ 使用者責任とは?

監督義務者責任

家族・親・兄弟等が,その加害者の監督義務者であるといえる場合には,その家族等は損害賠償責任を負うことになります(民法714条)。

監護義務者というのは,単に事実上監護をしているというだけでは足りません。法的にその加害者が責任無能力者であり,その家族等が責任無能力者を監護する法的義務を負う場合には,監督義務者といえます。

たとえば,加害者が未成年者の場合には,責任無能力とされる場合が少なくありません(ただし,未成年者であるからといって,常に責任無能力者とされるわけではありません。)

未成年者が責任無能力者とされる場合には,その親権者(または未成年後見人)が監督義務者となりますので,その場合には,被害者の方はその親権者たる親等に対して損害賠償を請求できることになります。

→ 責任無能力者の監督義務者の責任とは?

未成年者が責任無能力者ではない場合

未成年者が責任無能力者とはいえない場合,前記のとおり,監護義務者の責任は発生しないことになります。

しかし,現実問題として,未成年者には,仮に責任弁識能力があったとしても,損害を賠償するだけの経済力などがあるとは思えません。

責任弁識能力がある未成年者の交通事故の方が社会的非難は大きいというのに,監督義務者の責任を追及できないがために被害者は泣き寝入りするほかなくなるというのも不合理な話です。

そこで,未成年者が責任無能力者とはいえないときでも,一定の場合には,被害者の方は,その親権者等に対して,民法709条に基づいて直接損害賠償を請求できると考えられています。

ただし,常に民法709条に基づく直接の損害賠償請求が認められるわけではなく,ある程度限定された場合にのみ認められるものと考えられています。

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