任意保険における示談代行サービスとは?
任意保険には,主要な保険商品のほかに示談代行という特約が付されることがあります。ここでは,この任意保険における示談代行サービスについてご説明いたします。
示談代行サービス
任意保険には,主たる保険サービスの他に,いろいろなオプションのサービスが付けられることがあります。その代表的なものが,示談代行サービスです。
示談代行サービスとは,被保険者等が交通事故を起こし,被害者から損害賠償の請求を受けた場合に,保険会社の交渉担当者がその被保険者等に代わって,被害者と交渉し示談を取り付けるというサービスのことです。
交通事故の被害に遭った場合,被害者の方は,加害者等に対して損害賠償を請求することができます。
もっとも,交通事故の損害賠償請求には,専門的な法的知識が必要となってきます。もちろん,自動車保険の知識や裁判等の手続についても知っておく必要がありますし,それらの知識をもとに,裁判になったらどうなるのかというある程度の見通しも必要となってきます。
そのため,ご自身で相手方と交渉するというのは,なかなか手間がかかってきます。相手方が保険会社の担当者であれば,相手はプロですから,対等に交渉するためには,さらに専門的な知識が必要となってきます。
しかし,これらの専門的知識等を修得するのは容易ではありません。また,交渉のための時間や資料等の用意などの手間も,実際にはそれなりの時間をとられることになります。
そこで,交通事故の損害賠償請求について,被害者の方の代わりに,保険会社の担当者が相手方と示談交渉をしてくれるというサービスが,いわゆる示談代行サービスなのです。
→ 任意保険について詳しくは,任意保険とは?
示談代行サービスのメリット
示談代行サービスには,被害者または加害者と直接交渉をしなくてよいため感情的になりすぎず,冷静に紛争を解決できるというメリットがあります。実際,当事者同士であると感情的になりすぎて,話し合いが全く進まないということもありますから,この点についてはメリットといってよいかと思います。
また,保険会社が交渉窓口となるため,暴力団等のいわゆる「示談屋」等の介入の心配がなくなり,安心して交渉できるという点もメリットといえるでしょう。実際,示談代行サービスは,このような反社会的勢力の介入を防止するという目的があったと言われています。
さらに言えば,示談交渉で解決できれば,紛争解決がスムーズです。被害者にとっては,損害賠償が迅速に支払われるということもメリットといえるでしょう。示談代行サービスのデメリット
示談代行サービスには前記のようなメリットがありますが,その反面,弊害はないわけではありません。
最大の問題は,支払われる損害賠償の金額です。通常保険会社が提示してくる損害賠償の金額は,裁判で認められる損害賠償の金額はかなり低額で,だいたい裁判基準の6割から7割程度であるといわれています。
もちろん損害が小さければ,例え裁判基準の6割から7割程度であっても,裁判をする費用等を考えれば,裁判外で早く支払ってもらった方が得だということはあり得ます。
しかし,例えば死亡事案や重度後遺障害事案など損害が甚大な場合には,裁判基準と保険会社の提示額とでかなりの金額の差が生じてしまうことになり,十分な損害の填補がなされないおそれがあります。
したがって,そのような場合に,示談代行によって示談だけで紛争解決してしまうと,損害が十分に填補されずに終わってしまうという可能性があります。
また,経済的な問題の他にも,加害者がまったく表に出てこないため,被害者の精神的な苦痛がまったく癒されないという道義的な問題もあるといわれています。
したがって,示談代行サービスについては,もちろん多くのメリットもあるのですが,同時に,特に被害者側の場合にはデメリットも少なくないということを踏まえておく必要があるのです。