傷害慰謝料

死亡事故における慰謝料請求とは?

交通事故によって被害者の方が亡くなられた場合,その相続人の方は,財産的な損害だけでなく,精神的な損害の賠償の請求権(慰謝料請求権)も相続することになります。ここでは,死亡事故における慰謝料請求について,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。

死亡事故における被害者自身の慰謝料請求権

交通事故によって被害者の方が亡くなられた場合,その方は亡くなられるのですから,死亡による精神的苦痛は被らないように思えます。特に,即死の場合であれば。事故と同時に亡くなるですから,精神的苦痛の生ずる余地はないようにも思えます。

もっとも,抽象的にみれば,事故と死亡との間には,時間的な間隔を観念することができます。そのため,この時間的間隔の間に,被害者が精神的苦痛を被ったと考えることは,理論的に可能です。

そこで,即死事案を含めて,死亡事故の場合であっても,被害者の方に精神的な苦痛が発生し,それにより精神的な損害の賠償請求権(慰謝料請求権)が発生すると考えられています。

この被害者の方に生じた慰謝料請求権は,その被害者の方の相続人に相続されることになります。そして,被害者の相続人は,被害者に成り代わり,加害者等に対して,慰謝料を請求することができます。

もっとも,どの程度の精神的な苦痛を被ったのかというのは,個々人によって違いますし,何より,人の内心に関わることですから,個別に客観的な判定をすることが困難です。

とはいえ,判定が困難だといって精神的な損害を認めないというのも,被害者の保護に反するでしょう。

そこで,死亡事故における慰謝料の金額については,これまでの事例の蓄積等によって,実務上,一定の基準が設けられています。

>> 死亡事故における損害賠償請求

自賠責保険

自賠責保険における死亡事故の慰謝料は,原則として350万円です。ただし,被害者に被扶養者がいる場合には,200万円が加算されます。

>> 自賠責保険とは?

任意保険

任意保険については,かつては,日本損害保険協会による統一基準がありましたが,現在では,保険の完全自由化が認められていますので,各保険会社によって慰謝料の支払い基準が異なっています。

したがって,金額の算定については,各保険会社の慰謝料基準をご参照いただいた方が正確でしょう。

ただし,実際には,自賠責保険基準よりも高額ではあるものの,後記の裁判基準よりはかなり下回っているのが通常です。

>> 任意保険とは?

ADR等の基準

交通事故の損害賠償請求については,各種の裁判外紛争解決機関(ADR)を利用して,示談のあっせん等をしてもらうという方法もあります。

このADR等については,特に基準は設けられていません。また,強制力があるわけではないので,その合意内容はまちまちですが,裁判基準の8割程度で合意をする場合が多いということです。ただし,場合によっては,裁判基準に近い裁定がなされることもあるようです。

>> 交通事故紛争の解決手段

裁判基準

裁判における慰謝料の金額の基準は,日弁連交通事故相談センター東京支部編の「損害賠償額算定基準(通称「赤い本」)」や日弁連交通事故センター編の「交通事故損害額算定基準(通称「青い本」)に記載されている基準が用いられるのが一般的です。

上記赤い本によれば,死亡慰謝料の基準額は,以下のとおりです。

  • 被害者が一家の支柱である場合には2800万円
  • 被害者が母親または配偶者の場合には2400万円
  • その他の場合には2000万円~2200万円

この金額には,後記の近親者固有の慰謝料の金額も含まれていると解されています。

>> 日弁連交通事故相談センター

死亡事故における近親者固有の慰謝料請求権

死亡事故の場合,被害者のみならず,その近親者が被る精神的苦痛も甚大です。

そこで,民法上,死亡事故については,父母・配偶者・子については,近親者固有の慰謝料請求権が認められています。

近親者固有の慰謝料とは,つまり,その近親者自身の被った精神的苦痛に対する慰謝料です。あくまで近親者自身の慰謝料ですから,前記の被害者自身の慰謝料とは別のものとなります。

したがって,近親者は,被害者から相続した慰謝料請求のほかに,近親者固有の慰謝料も請求できることがあるということです。

なお,ここでいう近親者は,原則として,父母・配偶者・子ですが,場合によっては,訴訟において,これらの人に匹敵するほどに近しい関係にある近親者にも,近親者固有の慰謝料請求権が認められる場合もあります。

>> 近親者固有の慰謝料請求権とは?

自賠責保険

自賠責保険基準では,遺族固有の慰謝料が認められるのは,父母・配偶者・子に限られています。

これらの請求権者が1人である場合には550万円,2人の場合には650万円,3人以上の場合には750万円とされています。

任意保険・ADR

前記被害者自身の慰謝料の場合と同様,こちらも,各任意保険会社の基準をご確認いただいた方が確かです。

また,ADR等の場合も同じく,裁判基準の7~8割程度が標準とされ,場合によっては裁判基準とほぼ同様の金額が基準とされているようです。

裁判基準

前記被害者自身の慰謝料(赤い本の基準額)には,近親者固有の慰謝料が含まれていると解されています。

その意味では,前記被害者自身の慰謝料金額は,遺族の数に関わらず,被害者および近親者の慰謝料の上限の基準を画したものといえるでしょう。

(著者:弁護士 志賀 貴

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