交通事故における損益相殺

損益相殺とは?

不法行為による損害賠償請求においては,不法行為によって損害を被るとともに利益を受けた場合に損害からその利益を控除する「損益相殺」がなされます。ここでは,この損益相殺とは何かについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

損益相殺とは

不法行為を受けた場合,損害を被るだけでなく,別途,利益を得るということもないわけではありません。

たとえば,不法行為によって死亡した場合,死亡という著しく大きな損害を被ってはいますが,反面,生活費の支出はなくなったという利益を得たとみることもできます(考え方が道徳的に妥当かどうかということとは別に,理屈上,そのように考えることができるということです。)。

また,不法行為によって財産に損害を被ったという反面,保険金や何らかの手当金などが支払われるという利益を得るということもあるでしょう。

不法行為制度の趣旨は,当事者間の公平を図るということところにありますから,いかに不法行為の被害者であるとはいっても,被害回復以上の利益を与えてしまっては,公平の趣旨に反します。

そこで,法律上に明文はないものの,不法行為によって利益を受けた場合には,損害からその利益を控除することになっています。これを「損益相殺」と呼んでいます。

交通事故の損害賠償請求の場合も,不法行為責任に基づくものですから,やはりこの損益相殺がなされることになります。

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損益相殺と代位

損益相殺に関連するものとして「代位」という法制度があります。

たとえば,不動産が不法行為によって焼失してしまい,その不動産の所有者が火災保険金の支払いを受けた場合,その火災保険会社は,その保険金の支払金額の限度で,被害者に代わって,加害者に対して損害賠償請求することができます。これが代位という制度です。

上記のように代位がなされた場合,損害賠償請求を受ける側(加害者)としては,支払先が変わるだけで大きな影響はありませんが,損害賠償請求権者(被害者)からすれば,代位によって,自分の請求権の一部がなくなるため,損益相殺に近い状態になるといえます。

もっとも,効果は似ているとはいっても,両者はあくまで別の制度です。最高裁判例においても,損益相殺と代位は区別して考えられています(最三小判昭和50年1月31日・民集29巻1号68頁)。

もっとも,上記のとおり,被害者側から見れば損害賠償金額は控除される(別途,同額相当の給付があるとしても)ことは確かですので,被害者からすれば,代位と損益相殺を区別する実益はあまりないかもしれません。

損益相殺により控除される利益

損益相殺として控除される利益としては,支出節約型と給付型に分けることができます。

支出節約型とは,不法行為によって損害を被った反面,本来であれば支出しなければならなかったはずの支出をしないで済んだという意味での利益です。たとえば,死亡事故の逸失利益における生活費控除などがこれに当たります。

給付型とは,文字どおり,不法行為によって損害を被った反面,第三者(または不法行為者)から損害賠償とは別の給付がなされたという場合です。社会保険の給付などがこれに当たります。

ただし,上記のように分類できるとしても,具体的にどのような利益を控除すべきかというのは,やはり公平の観点から個別具体的に判断していくほかありません。

特に,第三者から給付があったものの,その第三者による代位が生じない場合(給付をした第三者による求償等の請求がなされない場合)に損益相殺を認めると,加害者はその分だけ支払いを免責されるということになりますから,損益相殺を認めるべきかどうかは慎重に判断されなければならないでしょう。

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(著者:弁護士 志賀 貴

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