運行供用者責任

運行供用者に損害賠償を請求できる「他人」(他人性)とは?

運行供用者責任に基づく損害賠償を請求できるのは,自動車賠償責任保障法3条にいう「他人」です。この損害賠償請求できる「他人」とは誰かという問題のことを「他人性」の問題といいます。ここでは,この運行供用者責任に基づいて損害賠償を請求できる「他人」とは誰か(他人性)についてご説明いたします。

損害賠償請求できる「他人」(他人性の問題)

自動車損害賠償保障法3条本文は,「自己のために自動車を運行の用に供する者は,その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは,これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。」として,運行供用者責任に基づく損害賠償を規定しています。

これによれば,運行供用者責任は,「他人の生命又は身体」を侵害したときに生ずるものとされています。

生命・身体への侵害という損害を被った者が「他人」であれば運行供用者責任が生ずるということですから,運行供用者責任に基づいて損害の賠償を求めることができるのも,損害を被った「他人」ということになります。

そこで,この運行供用者責任を追求できる「他人」とはどのような人のことをいうのかということが問題となってきます。これを「他人性」の問題と呼ぶことがあります。

運行供用者本人

まず,前記自賠法3条本文の規定からすれば,運行供用者自身は,そこでいう「他人」に当たらないことは明らかです。

運行供用者の家族や親族など

自賠法3条本文の「他人」をいわゆる「赤の他人」という意味に捉えるのであれば,運行供用者の家族や親族等は「他人」に当たらないと考えることもできそうです。

しかし,運行供用者の妻が自賠法3条本文の「他人」に当たるかが争われた事件で,最高裁判所第三小法廷昭和47年5月30日・民集26巻4号898頁は,以下のとおり判示して,運行供用者の妻であっても「他人」に当たるという判断をしています。

自賠法3条は,自己のため自動車を運行の用に供する者(以下,運行供用者という)および運転者以外の者を他人といつているのであつて,被害者が運行供用者の配偶者等であるからといつて,そのことだけで,かかる被害者が右にいう他人に当らないと解すべき論拠はなく,具体的な事実関係のもとにおいて,かかる被害者が他人に当るかどうかを判断すべきである。

この判例によれば,自賠法3条の「他人」とは,運行供用者と運転者以外の者をいうということになります。したがって,配偶者など運行供用者の親族や家族等であっても,運行供用者や運転者でない限り,「他人」に当たるということになります。

運転者・運転補助者

前記のとおり,判例は,自賠法3条本文の「他人」とは,運行供用者及び運転者以外の者のことをいうと解しています。

ここでいう「運転者」とは,自賠法2条4項にいう運転者のことです。

自動車損害賠償保障法2条4項
この法律で「運転者」とは,他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事する者をいう。

すなわち,前記判例も加味して考えれば,自賠法3条本文の「他人」とは,運行供用者及び自動車の運転者又は運転補助者のことをいうということになります。

運転者とは,言うまでもなく,自動車を運転している人のことをいいます。ただし,例外的な事情がある場合には,実際に自動車を運転していない場合であっても.運転者として扱われることはあり得ます。

他方,運転補助者とは,運転者とはいえないものの,少なくとも運転行為の一部を分担するなど,運転行為について運転者と密接な関係にある者のことをいうとされています。

運転行為について密接な関係がなければならないのですから,単に,運転者の家族であるとか親族であるとかいう理由だけで,運行補助者となるわけではありません。

逆に,運転行為について密接な関係にあればよいのですから,業務として運転を補助していたというような事情は必要ではなく,業務ではなく私的に運転を補助していたような場合であっても,やはり運行補助者になると考えられています。

これら,自賠法2条4項にいう「運転者」,すなわち運転者または運転補助者は,「他人」には当たらないと解されています。

なお,念のため付言しますが,運転者は運行供用者ではないので,運行供用者責任は負いません。運転者が負うのは,一般不法行為責任です。ただし,運転者がその自動車の所有者であるなど運行供用者にも当たる場合には,運行供用者責任を負うことがあります。

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