運行供用者責任

運行供用者責任における「運行によって」(運行起因性)とは?

運行供用者責任が成立するためには,発生した損害が自動車の「運行によって」生じたものである必要があります。これを「運行起因性」の問題といいます。ここでは,この「運行によって」の意味(運行起因性の問題)についてご説明いたします。

「運行によって」の意味(運行起因性)

自動車損害賠償保障法3条本文は,「自己のために自動車を運行の用に供する者は,その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは,これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。」と規定し,運行供用者責任について定めています。

この規定によれば,運行供用者は他人の生命や身体を害したときに損害賠償責任を負うとされていますが,単に他人の生命・侵害を害したというだけではなく,その侵害が「運行によって」生じたものであることを求めています。

つまり,自動車の運行に起因した生命等の侵害についてのみ,運行供用者責任を負うということです。この損害が運行によるものであるかどうかという問題のことを「運行起因性」の問題と呼ぶことがあります。

「運行によって」の解釈

自賠法3条本文の「運行によって」とは,上記のとおり,損害が自動車の運行に起因しているかどうかという問題です。

いいかえれば,生命・身体等の侵害という損害と自動車の運行との間に「因果関係」があるのかどうかということですが,どの程度の因果関係があれば「運行によって」生じたといえるのかという点については,いくつかの考え方があります。

条件関係

因果関係は,「あれなければ,これなし」という関係を基本としています。この考え方を「条件関係」といいます。

しかし,運行と損害との間の因果関係とは条件関係のことであると考える(事実的因果関係説)と,運行に関わるあらゆる事象が損害と関係あることになり,いくらなんでも運行供用者責任の範囲が拡大しすぎてしまいます。

例えば,交通事故後,被害者が病院に搬送される途中,突如として搬送している救急車に落雷があり,それによって被害者が感電死したとします。運行と損害との間の因果関係を条件関係と考えるならば,これも運行によって引き起こされた損害ということになってしまいます。

このように考えることは,たとえ運行供用者責任が被害者のための制度であるとしても,あまりに運行供用者が責任を負う範囲が拡大しすぎてしまい,かえって不公平になるおそれがあります。

そこで,「運行によって」の解釈においても,条件関係があることは前提としつつも,それをある程度合理的な範囲に限定する必要があります。

相当因果関係説

「運行によって」の解釈については,運行に際して発生したものであれば足りるという見解もありますが,判例・通説は,相当因果関係説を採用しています。実務でも,相当因果関係と捉えていると言ってよいでしょう。

相当因果関係とは,条件関係(事実的因果関係)があることを前提としつつも,当該加害行為があれば,一般的に当該損害が生ずるであろうといえる場合にのみ法的な因果関係を認めるという考え方です。

つまり,条件関係があったとしても,一般的にその加害行為からその損害が生ずるとは言えないような場合には,「運行によって」生じた損害とはいえないとするというものです。

この相当因果関係における「相当性」の判断は,一般的な判断が基準とされます。一般的判断とは,要するに通常の人,一般人からみた場合どうなるかということです。いわゆる社会通念を基準とするということです。

もちろん,社会常識といっても,客観的に,そして,法的・合理的な社会常識です。単に,加害者が悪いとか被害者がかわいそうとかどういうことでは判断されるわけではありません。

あくまで,事故の現場の状況,事故状況,加害者の運行の態様,被害者の事情等の客観的事実を踏まえて判断されることになります。

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